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自作スピーカーと測定  * 冬うさぎの晴耕雨読な日々 *

自作スピーカーと測定に関するブログです。

Category :  SEAS Excel Project
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Millsはどんどん切れ味が良くなってきましたが、そうすると今度は中高音が耳に付くようになり、またもや再調整を余儀なくされました。ただ、このあたりの勘所は分かっているので、SEASの『魂柱』ことQダンプ抵抗のR2を47Ωから39Ωにして3.5~4.5kHzあたりのレベルを少し下げてバランスを整えました。

このときの周波数特性の変化をSpeaker Workshopで確認してみると、驚いたことに0.24dBしか変わっていません。

こちらが再調整前。MAXの値がちょうど3.5~4.5kHzあたりに相当します。
Excel2

こちらが再調整後。
Excel151226

この帯域における人間の聴感は極めて敏感だということでしょうが、うちのSEASの場合はそれだけではなく、Qダンプ抵抗をいじることでHPFの過渡特性が変化し、それが音色に影響を与えている気がします。

こちらはHPFの伝達関数(Transfer Function)です。ここでいう伝達関数とはHPFの周波数-電圧特性のことです。Speaker WorkshopにはTransfer Functionを直接求める機能はないのですが、[Calculate]→[Combine]を使ってフィルター後の特性をTWの裸特性で割ることで求められます。

現状の伝達関数は3.5kHzにリップルがあり、2次のチェビシェフフィルターのような特性です。このリップルはQダンプ抵抗を大きくすると高くなり、小さくすると低くなりますが、いずれにせよ臨界制動ではないので、何らかのおつりが来ているはずです。

Transfer_1


何故こんなリップルが残っているかは、こちらを。

ピンクがバッフルに取り付けた状態でのT25CF001の裸特性、赤がHPFを通った後の音圧特性で、白で示したLR4@1.9kHzにほぼ沿っています。ピンクと赤の差分が伝達関数に相当するのですが、ピンクの裸特性には3.2kHzにディップがあるため、これを補正して滑らかなLR4を作ろうとした結果、伝達関数にピークを残す結果となっています。ちなみに3.2kHzのディップはT25CF001のデータシートにはなく、Edgeによる解析からバッフル回折によることが分かっています。つまりバッフル形状に原因があるということです。

Transfer_2

伝達関数にリップルがあるとどうなのか、ちょっと心配になってDickasonの”Loudspeaker Recipe”を読み返してみましたが、いずれの作例でもTransfer Functionを確認しつつ、多少のリップルは許容しているようでした。

うちのSEASは時折、水面に光が反射するがごとく『きらりん』といってみたり、ハスの葉の上を水滴が転がるがごとく『ころりん』といっってみたり、独特の美しい音色を聴かせます。これは意図したものではなく、最初から備わっている特徴です。ハイ上がりというよりも音の輪郭が強調されるような一種の色づけで、モニタースピーカーとしてはNGですが、これがうちのSEASの魅力になっています。この独特の表現はSEASのツィータの個性によるところもあるでしょうが、上述のHPFの過渡特性もその一端を担っている気がします。そしてその過渡特性の根源がバッフル形状にまで遡及するとすれば、スピーカー作りは実に奥が深いと言わざるを得ません。



(つづく)


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テーマ:オーディオ - ジャンル:趣味・実用

コメント


この記事内容に強く同意します!(笑) もちろん、バッフル形状やエンクロージャー形状に凝った自作スピーカーも多く見られますが... バッフル形状とクロスオーバーからフラットネスを追い詰めている人は少ないですよね。
そうやってみると、Genelec社のアルミダイキャストエンクロージャー・バッフルの形状設計は凄いな、といつも思います。ちょっとあそこまで自作で到達できる気はしませんが...
2015/12/29 23:18  てつ  URL  #-  編集

Re: タイトルなし
てつさん、こんばんは。

確かにGenelecのようなプロの仕事には太刀打ち出来ませんね。聴いたこと無いけど...

ネットワークは何度でも組み替えが出来ますが、バッフルはそうはいかないので運命の分かれ道という気がします。

私の記事ですが、実はちょっと半信半疑なところがあります。たとえばLR4のHPFを設計する場合、ドライバの低域ロールオフが12dB/octだとするとそこに2次のフィルターを重ねてLR4のAcoustic slopeに仕上げますよね。つまりAcoustic slopeがLR4になっていればツィータは位相特性も含めてLR4としてのフィルター特性を持っているという結果オーライ的な考え方が前提になっています。このことはLDCにもRecipeにも明示的には書かれていないのですが、解説を読む限り『言わずもがな』という書き方だし、実際にReverse nullも出ているので、そういうものなのかなと今日まで99%の確信でやってきたわけです。

話はちょっと飛びますが、SPLTracerを使って周波数特性だけを拾ったデータをSpeaker Workshopにインポートしてやると、適当に位相特性を計算してシミュレーションが走ってしまいます。どうもヒルベルト変換という数学を使えば周波数特性から位相特性が一意的に求められるらしいです。

記事の話に戻りますが、私のケースではバッフル回折とフィルタの伝達関数の凸凹がキャンセルして最終的にはLR4のAcoustic slopeになっているので、上記の理屈でいえば過渡特性もLR4そのものなのかも知れません。であれば、伝達関数のリップル云々の話は関係ないよ、ということになるのですが。



> この記事内容に強く同意します!(笑) もちろん、バッフル形状やエンクロージャー形状に凝った自作スピーカーも多く見られますが... バッフル形状とクロスオーバーからフラットネスを追い詰めている人は少ないですよね。
> そうやってみると、Genelec社のアルミダイキャストエンクロージャー・バッフルの形状設計は凄いな、といつも思います。ちょっとあそこまで自作で到達できる気はしませんが...
2015/12/30 22:36  Iridium17  URL  #-  編集


Iridium17さん
僕もユニット固有のスロープ+フィルタースロープ=トータルスロープ特性と思って設計しています。Zaphでも、-6dB(ユニット)+1次フィルターでLR2を設計していましたし、自分のHPFも-6dB(ユニット)+3次フィルターでLR4を設計しました。

で、自分の伝達係数も見直してみました。
http://naseba.exblog.jp/iv/detail/index.asp?s=22011912&i=201508/10/27/d0122127_1922161.jpg
最終的にはここのredの特性を選んでいるのですが、LPFはリップルが出ています。HPFに関してはウェーブガイドによる増強のほうが大きいため、リップルを無視した設計になっています。
Iridium17さんの設計ではHPFにバッフルステップによるリップルも補正するような係数で組まれていますが、ツィーター軸外での特性でリップル補正が耳についたりするのでしょうか?
電気的な補正と、物理的な補正(electric or acoustic)の兼ね合いは難しいところですが、SEASのバッフルにRをつけるのも選択肢かもしれませんね…

差し出がましい意見でした。
2015/12/31 13:42  てつ  URL  #-  編集

管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015/12/31 15:32      #  編集

Re: タイトルなし
てつさん、こんばんは。

> で、自分の伝達係数も見直してみました。
> http://naseba.exblog.jp/iv/detail/index.asp?s=22011912&i=201508/10/27/d0122127_1922161.jpg
> 最終的にはここのredの特性を選んでいるのですが、LPFはリップルが出ています。HPFに関してはウェーブガイドによる増強のほうが大きいため、リップルを無視した設計になっています。

ウェーブガイドで持ち上がる分をHPFで落として低歪み化いるわけですね。


> Iridium17さんの設計ではHPFにバッフルステップによるリップルも補正するような係数で組まれていますが、ツィーター軸外での特性でリップル補正が耳についたりするのでしょうか?

このあたりが分からないところです。そういったことも含めて音色が形作られている気がします。
うちのSEASは7割が測定とシミュレーションの賜、残り3割は偶然の産物だと思っています。


> 電気的な補正と、物理的な補正(electric or acoustic)の兼ね合いは難しいところですが、SEASのバッフルにRをつけるのも選択肢かもしれませんね…
>
> 差し出がましい意見でした。


いえいえ、おっしゃるとおりです。SEASを作り始めた頃はまだバッフル回折に関する知識が不十分だったのでビジュアル重視でこうなりました。その反省もあってPARCではバッフルにRを付けてかつTWもオフセットしてみました。Rはいいとして、TWをオフセットすれば軸上の特性は良くなりますが、その一方でこんな見方もあります。

『トウィータもミッドバスも、左右配置はセンターにしています。リップルだけで言えばオフセットした方が小さいですが、耳の位置から振動板位置を三次元的に捉えると、何とも、おかしな事になります。』

http://www.gem.hi-ho.ne.jp/katsu-san/audio/Speaker/baffle_step.html

Zaphさんの作例でもTWのオフセットあり/なし、両方ありますね。


2015/12/31 20:34  Iridium17  URL  #-  編集


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