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自作スピーカーと測定  * 冬うさぎの晴耕雨読な日々 *

自作スピーカーと測定に関するブログです。

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ARTAにはインパルス応答の測定信号としてPeriodic Pink Noise、Swept Sine、MLSの3種類が実装されています。以前、この3種類で測定したデータを比較したところ、全く同じ周波数特性が得られるだけでなくSN比も差がなかったので、これまでPeriodic Noiseを使ってきました。

http://iridium17.blog96.fc2.com/blog-entry-292.html

一方、最近の論文(といっても2000年以降の話ですが)では周波数を対数的にスイープするLogarithmic Swept Sine(以下、Log-SSと略します)が注目されているので、少し勉強してみました。Log-SSには時間軸上で高調波歪みと基本波を分離できるという面白い性質があり、ARTAにも実装されています。なお、日本ではTSP(Time Stretched Pulse)という呼び方もされていましたが、最近はSwept Sineに統一されつつあるようです。

http://www.asp.c.dendai.ac.jp/thesis/onko_0403_moriya.pdf
 『Logalithmic TSP信号を用いた高調波歪の検討』
古寺克行、金田豊(東京電機大学) 日本音響学会講演論文集 2004年3月  

基本波の主インパルスよりも高調波のインパルスの方が時間軸で先に現れるというのはまるでタイムマシンですが、専門用語ではこういうのを『因果性を満たさない』と言うそうです。ARTAのマニュアルの6.1.8章にも同じような図があります。

さて、この性質を音響測定に利用することで以下の2つのメリットが得られます。

(1)音響測定における非線形歪みの影響を排除できる

 インパルス応答測定は系が線形であることが前提となっており、非線形歪みの存在は測定誤差につながります。Log-SSを使って主インパルスの立ち上がり以前の部分を切り捨てることで、システム(主にはスピーカー自身)の非線形歪みの影響を排除することができます。

(2)高調波歪みが測定できる

 逆に、主インパルスよりも前の部分を取り出して解析すれば高調波歪みを求めることが出来ます。ARTAには"Simultaneous measurement of frequency response and harmonic distortions"という周波数特性と歪み特性を同時に測定するモードがあります。マニュアルにはFarina methodとの記載がありますが、元の論文はこちら。

http://www.nvo.com/winmls/nss-folder/electro1acoustics/Measuring%20impulse%20resp%20and%20distortion%20with%20swept%20sine%201341AES00.pdf
"Simultaneous measurement of impulse response and distortion with a swept-sine technique" Angelo Farina

Log-SSはParma大学のFarinaと日本の藤田がほぼ同時期の発案したと言われていますが、残念なことに世界的にはFarinaのほうが有名です。

ARTAの作者であるMateljan先生の論文によれば、周波数特性だけを測定する場合でもノイズがあまり多くない環境であればLog-SSが一番良いとの結論ですので、私の測定でも今後はLog-SSを使うことにします。

またSwept Sineの最適なスイープ時間は部屋の残響時間と相関があり、一般的にはスイープが数秒になるようなサンプル長/サンプリング周波数を選ぶとともに、アベレージングは使わないほうが良いそうです。そういえば、NHKスペシャルで見た歌舞伎座の音響測定はながーいSwept Sine一発で測定していました。


いろいろ読みました。

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(この章おわり)


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