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自作スピーカーと測定  * 冬うさぎの晴耕雨読な日々 *

自作スピーカーと測定に関するブログです。

Category :  SEAS Excel Project
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日本国内のサイトや書籍で目にするクロスオーバーネットワークに関する解説といえば、以下のような内容でしょう。

○ -6db/oct(1次)の場合はクロスオーバーポイントでの位相差が90°になるのでツィータは正相接続で-3dbクロスとすればフラットな周波数特性が得られる。LPFはウーファーと直列に1個のコイル、HPFはツィータと直列に1個のコンデンサを挿入することで構成され、計算式はそれぞれ、

  L = 159*R / fc
  C = 159000 / (R*fc)

である...

○ -12db/oct(2次)の場合はクロスオーバーポイントでの位相差が180°になるのでツィータは逆相接続で-6dbクロスとする。LPFはウーファーと直列に1個のコイルと、並列に1個のコンデンサを挿入することで構成され、計算式は...

○ -18db/oct(3次)の場合はクロスオーバーポイントでの位相差が270°になるのでツィータは正相接続で-3dbクロスとする...

○ -24db/oct(4次)の場合はクロスオーバーポイントでの位相差が360°になるのでツィータは正相接続で-6dbクロスとする...


これは理論的には間違いではないのですが、

ただし、ドライバの周波数特性もインピーダンスも位相も完全にフラットであること

という、とんでもない前提条件が付いていることは、あまりにも理解されていません。言うまでもなくこれは非現実的な仮定です。実際の減衰特性はフィルター回路だけで決まるのではなく、LPFやHPFの減衰カーブにドライバ自体の減衰カーブを掛け合わせたものになります。

以下はこのブログで公開しているSEAS Excelのクロスオーバーネットワーク回路です。ウーファー側のコイルと並列に小さなコンデンサと抵抗が入っていますが、これを無視すれば普通の-12db/octのLPF回路です。ツィータ側には抵抗によるアッテネータが入っていますが、それ以外は普通のHPF回路です。ただし素子定数はいかなる公式とも合致しません。

クロスオーバー回路.jpg


これがウーファー側の特性。黒がW15CY001の裸特性、緑が上記のネットワークを通した後の特性です。-12db/octのLPFを使っているにもかかわらず、黒の実線で示した-24db/octの理論特性にほぼ沿った最終特性が得られています。

クロスオーバー有無(ウーファー).jpg


こちらはツィータ側の特性。黒がT25CF001の裸特性、青が上記のネットワークを通した後の特性です。こちらも-12db/octのHPFを使っているにもかかわらず、黒の実線で示した-24db/octの理論特性に沿った最終特性が得られています。これらはマジックでもインチキでもなく、ARTAを使って測定したドライバの裸特性の実測データを元に、Speaker Workshopのネットワークシミュレータで素子定数を追い込んだ結果です。

クロスオーバー有無(ツィータ).jpg


これらを合成したのがこれ。クロスオーバー周波数は1.8kHzで-6dbクロス、ツィータは正相接続で平坦な周波数特性(赤)が得られています。

最終特性1.jpg


このように、クロスオーバーネットワークの設計とはドライバ自体の裸特性とフィルター回路の減衰特性を合成したものが所定の特性となるように素子定数を追い込む事であり、ドライバ自体の周波数特性やインピーダンス特性を無視して、公式だけを使ってクロスオーバーネットワークを設計するのは全く意味がないと言えます。



(この章おわり)


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