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自作スピーカーと測定  * 冬うさぎの晴耕雨読な日々 *

自作スピーカーと測定に関するブログです。

Category :  SEAS Excel Project
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コメントのほうで『バッフルステップ補正量の最適化』について質問がありました。私もちゃんと調べていなかったのでSpeaker workshopでの計算になりますが確認してみました。

こちらが最適化前後の比較。青が最適化前でLPFのインダクタが2.56mHのとき、緑が最適化後でインダクタを2.2mHに巻き戻したときの特性です。縦軸は1dB/divなので差は最大でも1dBほどですが、音の印象はけっこう変わりました。それとフラットネスでいえば緑のほうが良いというか中庸ですね。

なおインダクタを減らしたのはバッフルステップ補正の調整だけでなく、クロスを少しでも高くしたいという狙いもありました。

バッフルステップ補正比較


こちらはLPFの伝達関数(最適化後)とLR4@1.9kHzの比較です。ざっくりこの差がバッフルステップ補正量に相当すると思いますが、1kHzで6dBぐらいの補正量になっています。ほぼ理論値に近いですね。どうもうちのSEASは音圧特性のフラットネスも含めて理論に忠実に作った方が良い結果になるようです。

バッフルステップ補正量



(この章おわり)



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2009年12月にMadisoundからユニットが届いて以来、ちょうど6年経ちました。そのうち5年ぐらいをクロスオーバーネットワークの改良に費やしてきたことになり、現在の回路が4代目(Version4)になります。ヒトゲノム解読ではないですが、今ではクロスオーバーネットワークのどこをどういじれば音がどうなるかといったことも概ね分かっており、このドライバの組み合わせでこれ以上の改善は望めないと思えるところまで来たので、このあたりで本当のエピローグとします。

Version 3に至るまでの経緯はこちらに纏めてありますが、Version 4でのもくろみはバイワイヤリング化と、T25CF001にはちょっと低過ぎるクロス(1.8kHz)を少し上げるとともに、バッフルステップ補正量を適正化する(ちょっと弱める)というものです。

具体的な変更点は、

・バッフルステップ補正量を適正化(L2を2.56mH→2.2mHに巻き戻し)
・HPFの肩特性の調整(L3を0.5mH→0.45mHに巻き戻し)
・LPFのノッチフィルターを8.4kHz(Lc1の追加)と11kHz(C2とR3)の2段に
・LPFのキャパシタの変更(DAYTON→Jantzen Standard-Z)
・インダクタの防振、キャパシタのボードへの固定

Network_Final151231


といったところです。自分でコイルを巻き戻せるようになったのでE12系列に縛られることがなくなり、設計の自由度が増しました。

組み上げた当初は新たに導入したパーツの音質の経時変化に翻弄されましたが、現在はそれも安定し、バランスの取れた音に落ち着いています。

音の特徴ですが、私は音の特徴を文章で書き表すのが致命的に下手なのでうまく書けませんが、硬い/柔らかい、暖色/寒色といった評価軸でいうなら中庸です。そしてスーパーカミオカンデを満たす超純水のように無色透明です。

最大の特徴は存在感を誇示しない点でしょうか。まぎれもなく音楽が鳴っているのに、その脇で寡黙に突っ立っているスピーカー、そんな感じです。


この先やってみたいことと言えば、まず高級アンプで鳴らしてみたい。なにしろうちのSEASは自称60万円/ペア、仮想ライバルは 805Diamondですから、それにふさわしいアンプを、ってわけです。

もうひとつ、これまでうちのSEASは門外不出でしたが、今後は機会を見つけて家から持ち出し、他者の評価を受けてみたいと思います。

気になることと言えば、私の見るところ、最近の自作スピーカー界ではフルレンジ派か、そうでなければデジタルチャンデバ/マルチアンプ派か、といった2極化がますます進み、私のようなパッシブ2ウェイは少数派、絶滅危惧種かもしれません。計測とシミュレーションを行き来しながら2つのユニットの音圧特性と位相特性を合わせ込んでひとつのスピーカーシステムに仕上げるのは、本当に楽しい作業なんですけどね。



最後に、今年もたくさんのページビュー、コメントをくださった皆様にお礼申し上げます。

ありがとうございました。



(この章おわり)



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Millsはどんどん切れ味が良くなってきましたが、そうすると今度は中高音が耳に付くようになり、またもや再調整を余儀なくされました。ただ、このあたりの勘所は分かっているので、SEASの『魂柱』ことQダンプ抵抗のR2を47Ωから39Ωにして3.5~4.5kHzあたりのレベルを少し下げてバランスを整えました。

このときの周波数特性の変化をSpeaker Workshopで確認してみると、驚いたことに0.24dBしか変わっていません。

こちらが再調整前。MAXの値がちょうど3.5~4.5kHzあたりに相当します。
Excel2

こちらが再調整後。
Excel151226

この帯域における人間の聴感は極めて敏感だということでしょうが、うちのSEASの場合はそれだけではなく、Qダンプ抵抗をいじることでHPFの過渡特性が変化し、それが音色に影響を与えている気がします。

こちらはHPFの伝達関数(Transfer Function)です。ここでいう伝達関数とはHPFの周波数-電圧特性のことです。Speaker WorkshopにはTransfer Functionを直接求める機能はないのですが、[Calculate]→[Combine]を使ってフィルター後の特性をTWの裸特性で割ることで求められます。

現状の伝達関数は3.5kHzにリップルがあり、2次のチェビシェフフィルターのような特性です。このリップルはQダンプ抵抗を大きくすると高くなり、小さくすると低くなりますが、いずれにせよ臨界制動ではないので、何らかのおつりが来ているはずです。

Transfer_1


何故こんなリップルが残っているかは、こちらを。

ピンクがバッフルに取り付けた状態でのT25CF001の裸特性、赤がHPFを通った後の音圧特性で、白で示したLR4@1.9kHzにほぼ沿っています。ピンクと赤の差分が伝達関数に相当するのですが、ピンクの裸特性には3.2kHzにディップがあるため、これを補正して滑らかなLR4を作ろうとした結果、伝達関数にピークを残す結果となっています。ちなみに3.2kHzのディップはT25CF001のデータシートにはなく、Edgeによる解析からバッフル回折によることが分かっています。つまりバッフル形状に原因があるということです。

Transfer_2

伝達関数にリップルがあるとどうなのか、ちょっと心配になってDickasonの”Loudspeaker Recipe”を読み返してみましたが、いずれの作例でもTransfer Functionを確認しつつ、多少のリップルは許容しているようでした。

うちのSEASは時折、水面に光が反射するがごとく『きらりん』といってみたり、ハスの葉の上を水滴が転がるがごとく『ころりん』といっってみたり、独特の美しい音色を聴かせます。これは意図したものではなく、最初から備わっている特徴です。ハイ上がりというよりも音の輪郭が強調されるような一種の色づけで、モニタースピーカーとしてはNGですが、これがうちのSEASの魅力になっています。この独特の表現はSEASのツィータの個性によるところもあるでしょうが、上述のHPFの過渡特性もその一端を担っている気がします。そしてその過渡特性の根源がバッフル形状にまで遡及するとすれば、スピーカー作りは実に奥が深いと言わざるを得ません。



(つづく)



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セメント抵抗をMillsに換えたものの納得したわけではなく、まだ堂々巡りをやっております。


  『別に汎用セメント抵抗だって、音が良ければそれでいいやんか ...』
  『そもそもワシが作ったスピーカーだし、誰に気兼ねすることもないし ...』



てなことを考えた末、もう一度セメント抵抗の音を聴き比べてみることにした次第。


  『おお、やっぱりヌケはいいな』
  『しかし、なんだか低音が薄い ...』



で、もういちどMillsに繋ぎ換えてみると、


  『おっと、低音の厚みが良い感じ ...』
  『あれ、音ヌケも悪くないぞ ...』



もうMillsをボツにしようかという私の心情を読み取ったかのように、急にMillsの音が良くなりだしたのでした。


Mills151220


思い返せば全ての抵抗をMillsに交換したのが3週間前。Millsが(というよりこの個体が)ちゃんと鳴るまでに相当の時間を要したということなのでしょう。

オーディオパーツのエージング効果の真偽については諸説あるようですが、私の経験では少なくともフイルムコンと抵抗には数十分~数週間のオーダーで音の変化が生じます。ただ、このとき感じる変化は音の曇りやヌケの悪さが徐々に解消されてクリアになるという方向で、時間とともにキツさが緩和されてマイルドになるという方向の変化は感じたことがありません。

その一方で、ネットワークボードの改造作業中にTWをキャパシタ1個の仮配線で鳴らしていた時期がありましたが、最初は高音がきついなあと感じるものの、数日するうちにあまり気にならなくなってしまいました。『慣れ』とは恐ろしいものですが、聴覚に限らず、人間には過度な刺激に対して『慣れる』ことにより精神的なストレスを緩和する本能が備わっているのでしょう。

だとすると、スピーカーケーブルを2週間エージングしたら聴きやすくなった、なんて話はひょっとしたら眉唾かも ...



(つづく)



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Mills MRAも落ち着いてきたようで、少しずつヌケが良くなってきました。我が家のSEASはとても普通の鳴り方で、良く言えばナチュラル、悪く言えば特徴の薄い鳴り方です。これが私の求めた方向だったのか少々疑問なところもあり、そのせいでエピローグの筆が進みません。

とはいえ、エピローグが終わらないと次に進めないので、思いつくところから書いておきます。

さて、LPFのキャパシターのようにシグナルパスとグランドの間に入る素子はこれまであまり重要視していなかったのですが、実は意外に影響が大きいことが分かったのは今回のプロジェクトの収穫のひとつです。独善的に解釈すれば、ネットワーク定数がかなり煮詰まってきたのでパーツの差がよく分かるようになったのかもしれません。

LPFに採用したJantzen Standard-Zキャパシタは図太さとヌケの良さが共存した鳴りっぷりが気に入っています。同じJantzenのCrossCapとの価格差はほどんと無いのですが、クオリティはけっこう違うように感じます。


Standard_Z_2



(つづく)





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